間接部門とプロフィットセンター問題

セールス部門以外の部署というのは、一見すると売り上げがないので、全部コストセンターと言われます。
まぁ実際、外部からのキャッシュインがないのだから、コストセンターには違いないですけどね。
しかし、コストセンターという響きに負い目を感じるためか、プロフィットセンターにしたいという声をよく聞きます。
たしかに、売上があれば会社に貢献していると一目でわかる。わかりやすいんですよ。
要は、売上があれば貢献している、売り上げがないならお荷物だという価値観ですよね。
つまり、(見た目)売上を上げてる部署が偉い、それ以外の部署は偉くない、引け目を感じて仕事したいということですね。
こういう話を聞くと、いやいや湾曲しすぎというか、そんな単純なものじゃないでしょうというか、なんとも言えない気持ちになります。
小学生に説明するにしても「その説明はないでしょう」と思いますね。というか、小学生に説明するにしても、完全に間違っていると思うんです。
会社を人間に例えるとしますよね。会社は売上=お金の流入がないと死んでしまう。じゃぁ人間のお金が何かというと、1つは酸素ですよね。他にも食べものや、感情の安定のために人付き合い(人からの言語的、非言語的な流入)などもあるけども、まぁ酸素にしましょう。
さっきの話で、会社のお金=人間の酸素であれば、肺が偉くて、脳や心臓や手や足は偉くない。というかお荷物ということになりますね。
写真の女性みたいに息をいっぱい吸って、酸素を取り込んでいる肺が偉いと。
じゃぁ、肺以外の組織は、いつも肺に対して負い目を感じて活動してるかというとそんなことはないんですし、肺も別に偉いとも何とも思ってないんですよ。
それぞれの組織が1つの身体という共同体を維持するために独自に活動している。まぁ、誇りをもってやってるかどうかはわからないけども、少なくとも負い目を感じたり、「自分も酸素を取り込まないと!」とは思っていないんですね。
そもそも、肺のいうのは、酸素を取り込むのが得意だし、好きだから、肺はみんなの分の酸素を取り込む仕事をしているわけです。
心臓は血液を送るのが得意だし、好きだから血液を送る仕事をしているんですよ。
もちろん、心臓や脳から肺が依頼を受けてやってるわけでもないんですよ。好きだからやってるんです。むしろ、好きなことをやらせてもらってありがとうと思ってるでしょう。
だから、他の組織と比べて、悩んだりするかというとまったく悩まないんだよね。
あー、肺ってかっこいいなー、肺になりたいなーとか思わない。
じゃぁなんで、身体の組織は、肺ってかっこいいなーと思わないのに、会社の組織はセールス部門にあこがれるのか。コストセンターはプロフィットセンターにあこがれるのか。
それは、1.職業選択の自由がある、2.自分の仕事に自信がない、の2つの要素が関係してくるんです。
1.職業選択の自由があるというのは、身体でいうなら、自分も肺になれるということ。今の役割を辞めて、他のカッコイイ仕事ができるという職業を選択できる自由があると、他の仕事が気になってしまうのです。Youtuberでバカやって1億円稼いでいる奴が気になるのは、自分もYoutuberになれるからです。(成功するかどうかは別として)
2.自分の仕事に自信がないというのは、お金という概念の有無と、なんでもお金という尺度で評価できると思っているから。
まず、身体にはお金という概念がないので、お金の多い少ないで引け目を感じないということ。
肺の方がお金を多く稼いでいるからうらやましいとはならないですよね。
こう説明すると、いや、酸素をお金に例えようといったじゃないですか!という反論もあると思いますけど、そもそもな話、心臓は酸素で評価しないんですよ。酸素で評価してる時点でもうね、議論にならないというか、冗談ですよね?というレベルの話です。
落ち着いてリラックスして考えればわかると思うんですけど、心臓は最大心拍数とか血流量とか、規則正しく動いている(不整脈じゃない)とか、肺とみるべきKPIが違うんですよね。
「じゃぁ心臓は酸素(お金)というKPIは見ないんですか!」と思うかもしれませんが、まぁ見ますよ。それは見ますけど、酸素を一番重要な指標にもってくるのは違うということなんですよね。「ウチの心臓という部署が問題だ!」という場合は、不整脈とか、心拍数が上がらないことが問題ですよね。心臓が元気に規則だだしく血液を送り出しているし、最大心拍数も脳や身体かやりたいことをやるのに十分な数値だ。でも酸素消費を削減できない、消費効率が上がらないのが問題、病気だとは言いませんよね。
自信がないというのは、なんでもお金で換算できると思ってしまっている、勘違いの極みということなんですよね。
目に見えるお金ばかり見てしまうと、本当に重要なこと、本当に使うべきKPIが見えなくなってしまうんです。
ここで話をコストセンターの話に戻しますが、まずそもそもコストセンターをプロフィットセンターにしようというのは、そういう目標を考えてもいいですけど、いきなりウチもどうやったら売上あがるかな、外販かな、営業部隊を作るといいのかな?じゃないんですよ。
プロフィットセンターになるには正しい順番というものがあります。ありますが、要は、ちゃんと自分の仕事をやってたら、プロフィットセンターになって「しまって」、売上があがって「しまう」んですよね。
だから、プロフィットセンターがいいなーと思うのは、やることやってない、あるいは本来やるべきことを避けていて、その言い訳のために、プロフィットセンターになりたいなーと思っているということです。
宝くじ当たらないかなーレベルの安直な発言なんですよね。
じゃぁ、本来やるべきことというのは、コストセンターの本業をエクセレントなレベルでやるってことなんです。エクセレントなコストセンターだったら、周りが放置するわけがないんですよね、そもそも。エクセレントな噂を聞きつけて、コンサルしてくれとか、アウトソースを受けてくれって話になりますからね。本業をエクセレントなレベルでやってたら勝手にプロフィットセンターになってしまうんです。
いいですかココ重要なポイントです。プロフィットセンターになるんじゃなくて、勝手になってしまうんです。お金は向こうからやってくるんですよ。
だから、プロフィットセンターにすれば・・・とか思うのは、本業をエクセレントにできない、あるいはそういう発想がそもそもないので、俺もYoutuberでエクセレントに1億!と言ってるのと同じです。
要は、今、目の前の仕事はお金をもらうレベルまでやってないし、やる気もでないけど、別の仕事をやってみたら、自分の能力がいきなり上がって、やる気がでて、お金がもらえるのでは?と安易に思っているということです。そんなことはないんですけども。
これは一例ですが、多くの企業ではこのような勘違いが独り歩きし、本来やるべきことが放置されて、その結果、無駄な資料作り、いわゆるブルシットジョブというやつですが、そんな仕事が多くあります。なぜ、こう言い切れるかというと、日本の生産性があがってないデータもそうですが、大体の会社でKPIがないか、あっても継続的にKPI自体をアップデート、KPI自体のPDCAを回してないからです。つまりKPIを使ってないか、使い方が間違っているということです。
そもそもですけど、KPIがないと現在地がわかんないんですよね。
KPIは地図でいうところの座標軸、緯度経度なんですよ。これがないと自部署がどういう状態か、どこにいるかわからない。ウチの部署は良いといえば良いかもしれないし、悪いといえば悪いかもしれない。
KPIで現在地がわからないと、ゴールまでの乗り物=改善点も設定できませんから。あるいは、改善しなくてもいいところを改善して、生産性が上がりすぎて、不良在庫=無駄な資料が積みあがることもあります。
だったら、KPIを設定しましょうと設定はしたものの、なんかピンとこないとかね。思ったのと違うから使えないとかね。
これはそもそもKPIの使い方がまちがってるんですよね。
KPIの使い方がお金のためだったり、何かあった時に言い訳するために使うと、そりゃぁ、KPI見ても、お金が簡単に増えない(簡単にコストは減らない)から、意味ないとか、あるいは、問題あった時の言い訳として、KPIではこうなんで・・・と使おうと思ってるってことです。
こういうことなんですよね。KPIは現在地を把握して、エクセレント、未知の領域=理想のゴールを目指すために使うのでね。お金を増やしたいとかのお金中心の考え方とか、これはゴールじゃないですから。お金はゴールを目指すために途中で必要な資源の1つで、お金が目的じゃないんですよ。
また、保険かけたいという、現状維持の思いが中心にあると、使わなくなりますよ、それは。現状維持という思いがある時点で、何も起きませんから。むしろKPIで丸裸になるので、KPIがない方が言い訳しやすい。
そもそも保険なんていう概念がないんですよね。未知の、理想の、リスクが高い領域を目指すんであれば、問題が起きて当然なんですから。
だから、エクセレントを目指したいという高いゴール設定があることが KPIを使う前提となります。
でね、こういう説明をすると「ウチもエクセレント目指したいので、KPIを導入してください」とお願いされるのですが、KPIってカスタムメイドだし、ある程度形になるまで時間がかかるんですよね。
なぜ、カスタムメイドかというと、社長や部門長が思うエクセレントの定義は人によってちがうし、そもそも、ご本人もわからないからですね。
詳しく聞いていくと、エクセレント目指したいではなくて、エクセレントを目指しているように見せたいだけで、実際は現状がいいんだというケースもあります。もちろん本人は現状がいいと自覚はしてませんが、これまでいろんなクライアントを見てきましたし、実際に一般企業に就職して実地の経験を積んだ私から見ると結局そういうことだなと。
で、仮に本気でエクセレントな部門を目指したい、そういう理想の部門を目的地に設定したいし、行動も必ずしますという人がいたとしますね。
まず、エクセレントが何かを決めないといけないのですが、どのようなエクセレントが部門良いかというのは、恋愛に似ています。
どんな彼女彼氏が好みですか?と聞かれて、性格がいい人と一口にいっても、いろんな「性格がいい」がありますよね。
ありますし、性格以外の要素もたくさんあるので、こういう彼女彼氏が欲しいですとはなかなか説明できませんし、仮に説明できても、計画と実績は違うんです。
計画と実績がちがうというのは、まだあなたが誰とも付き合ったことがない状況を想像してほしいのですが、誰とも付き合ってない状況で、こういう条件=パラメータ=KPIで、それぞれこういう値をもっている彼氏彼女がいいと定義するとしますよね。1万行くらいKPIを並べてね。
KPIというのは、KPI間の優先順位が一番重要で、次が各KPIの計測の仕方ですね。
で、KPIを1万行も優先順位高い順に並べれば、理想の彼氏彼女が見つかるわけじゃないんですよ。
たしかにそれだけたくさんのKPIを並べたら、その「パラメータに完全に一致した」彼女彼氏は見つかりますよ。
仮に、それで完全一致の相手が見つかって、付き合いますよね。
付き合ってみると、あれ?なんか違うなと思うところがあるはずです。これは、自分が設定したパラメータと自分の感覚がズレてるからですね。パラメータを作るという取り組みは初心者なので、自分の感覚をKPIに落とし込むのは難しいんです。精度が悪くて当たり前なんですよね。
だから、何回も付き合って実地テストして、KPI作りのスキルを上げる、自分の感覚のズレを修正していく必要があります。
修正というのは簡単ですが、実際にはもっと複雑です。
なぜなら、恋愛市場での自分と相手の市場価値を鑑みて、現実的なパラメタに調整、設定するステップが必要となるからですね。
自分の市場価値が500万円くらいなのに、相手のパラメタを5000万円に設定したら、そもそもテストできませんし、KPIのズレの調整もできませんからね。何年後かに5000万円の相手を選ぶというのはいいんですよ。というか必須でもあります。
ただし、その前に、自分の実力を図るために、現在地を理解するために、相手のKPIと自分のKPIの両方を調整・設定するんですよね。
まず、実際に数こなせる、テストできるレベルのKPIを設定して、次に、テストを繰り返して、自分の感覚とKPIの定義を一致、精度を上げていく。これが1層目のPDCAです。ここまでで、1~10000までのKPIの優先順位と今狙える彼女彼氏の上限値を理解します。
つまり、これが現在地を知るです。自分の市場価値がテストした結果、100万円でしたと、3000万円でしたでは、5000万円という目的地に向かう乗り物は変わってくるんです。
で、今のKPIが決まったら、KPIのゴール値を設定して、ゴールに向けた取り組みを実施します。
今の自分で最高かつ現実的に付き合える彼氏彼女のKPIと、それを狙える自分のKPIはわかりましたが、1年後、2年後はもっとエクセレントな彼氏彼女が欲しいはずなので、1年後、2年後時点で理想のKPI設定はどうだろうな?と中間ゴールを設定します。
まず、相手のKPIはこのくらいで、それと市場でマッチするような自分のKPIはこうかな?と計画していきます。
そうやって中間ゴールを設定したら、実際にゴールまでの乗り物=施策を決めて自分のKPI改善の取り組みを行います。
取り組みの結果、自分のKPI値が(中間の)ゴール値に近づいたかをチェックします。近づいた施策に資源を集中し、近づかない施策はやめます。
やめることが大事で、サンクコストを過大評価して、1つのKPIに執着してはいけません。
近づくか近づかないかは自分がが何が得意かによるので、不得意なものを伸ばすよりは得意なものを伸ばした方がいいですからね。
自分のKPIは伸ばしますが、伸びたKPIにマッチする相手のKPIがどうなるのか?のと、そもそもそういうKPIを持った相手が市場で見つかるのかもテストしないといけません。これがKPIのPDCAの2層目ですね。
こうやって何年かかけて、自分のKPIを使って自分を成長させていき、主に年齢で自分の市場価値が下がる前に、どこかのタイミングで結婚します。
で、結婚したらおわりじゃないですからね。結婚後もKPIは継続修正して、エクセレントな夫婦を目指すわけです。
管理職も一緒で、まず自分の理想の部署のKPIを設定します。これが理想の彼女彼氏像です。
現状の自部署の事は忘れてください。世界で一番エクセレントな自部署というのはどういうものか、市場調査してくださいね。
あなたが思ってるよりエクセレントな部署のヒントがいっぱいありますからね。
次に、その理想の部署に釣り合う、自分の理想のKPIと部下の理想のKPIですね。これが自身(私たち)のKPIになります。
後はこれまで説明した流れでPCDAを回していきます。
お相手の理想が低いとPCDAもKPIもいらなくなりますからね。
ありえないくらいの現状の枠の外の理想のKPIを設定する必要があります。
結局、日本人の給料が上がってないのは、ゴール設定なんですよね。ゴール設定が現状の枠の中なんですよ。理想が低いんですよ。
たまに頭のおかしな若手が理想を掲げることはありますけど、じゃぁその若手の「設定」でいっちょやってみるかという上司と、そんなの現実的でないという上司、どちらが上にいるか?で、会社の給料が上がるか下がるかが決まるといえます。
現実的でない、よくわからないといって、自分が知っている枠内でリスクをとらないことを優先すると、成長がないんですよね。
現実的でないと思うのは、自分が無知だから、自分の知らない世界があるはず、自分はもっと成長できると謙虚であれば、わからないことはむしろ大好物なはずなんですよ。
そもそも成長というのは、わからないことをわかるようになることで、知ってる範囲内の事を細かくわかるようになることじゃないんです。
知ってる範囲内の事をより細かく・・・みたいな方向に行っても、無駄なんです。
小学生が、宿題やる意味、メリットがわからないからやらないと言うことあると思うんですが、わかるはずないんですよ。
宿題をやり続けて、10年後とか20年後に意味がわかるのでね。
ITをわからない社長も多いんですが、まず、わかろうと思ってない、成長しようとは思ってないってことです。
でも、それでもいいんです。ITは理想の会社をつくる1つのパーツなのでわからなくてもいいんですよ。
ITをわかってくださいではないんです。そもそも理想の会社のハードルが高かったら、ITをわかるようになる必要がでてきますから。
だから社長はもう自分でも良くわからないくらいのゴールを設定しないと、会社が成長しないし、社員の給料も生産性もあがらないんです。
DXも一緒でDXを流行らせようとIT業界が頑張ってますけど、実際流行らせようとせずとも、個々の会社のゴールが高かったら、自動的にDXが流行ってしまうんですよね。
だから、IT業界もITが・・・じゃなくてとんでもないゴールを設定したくなるような、マーケティングをすべきなんです。
まぁ、この辺りはね、日本もそうですし、さらにIT会社はマーケティングが弱いし、お金を儲けるだけなら人増やせばいいんですけど、結局日本の将来の事を考えたらマーケティングですし、IT業界自体も全然効率化できるんですよね。
それで、もし、そんなゴールは想像できないという場合は、わからん部下のやることに寛容になってください、サポートしてあげてください。
自分のわかる範囲のことをやってる部下を可愛がっていたら理想の会社には近づかないのでね。
わからん部下のやることは少なくとも、現状の外なのでそれをやることでが理想に近づくかどうかもテストしないとわからないわけですから。
わからないからやらせないというのは、成長しないと言ってるのと一緒です。
少なくともわかる範囲の事だけやらせたら部下は成長しない、上司の劣化コピーしかできないのは間違いないです。
人生も一緒で、自分で高いゴールを持つかだけなんですよね。
高いゴールを持つからいろいろ考え始めるし、成長が始まるんです。
ゴールが低いからYoutuberとかに気が散るんですよね。
高いゴールが思いつきません!であれば、高いゴールを設定するにはどうすればいいんだろうとそこから問いが成長が始まりますからね。
最後に今日の話のまとめです。
- コストセンターという言葉に惑わされて、お金をKPIに設定するのは間違い
- KPIはゴール設定ありき
- ゴールが現状の中だと成長も不要。成長不要ならKPIも不要。
- 成長とはわからないことをわかるようになるということ
- 人も会社(法人)も「人」生のゴールを枠の外に置くから頭を使うようになる
- ゴールは現状の外におく。おくだけで成長が始まる
投稿者プロフィール
最新の投稿
お知らせ2022年9月17日大企業の行く末
お知らせ2022年7月24日間接部門とプロフィットセンター問題
シンプルでカスタマイズしやすいWordPressテーマ
ビジネス向けWordPressテーマ「Johnny」はシンプルでカスタマイズしやすいテーマです。ぜひ一度お試しください。